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日本道徳教育学会 神奈川支部
30年度 研究大会

2018.12.22
於 川崎市立 上丸子小学校

  
  平成30年12月22日(土)、6回目の「日本道徳教育学会神奈川支部」 研究大会が開催されました。今年度は会場は、川崎市立上丸子小学
 校で同じでしたが、中央ホールで行われました。
  今回も、他県から多くの参加があり、道徳教育への興味関心の高さ
 がうかがわれました。会場定員いっぱいの参加者で熱気がある研究
 大会になりました。  

 1、開会挨拶

 2、日本道徳教育学会 神奈川支部 田沼支部長 挨拶


   
・春のフォーラムに引き続き、多くの方のご参加ありがとう
    ございます。
    全国どこでも混乱してる授業展開と評価について今回は
    取り上げました。道徳は、まだまだ一合目です。みなさん
    でこれから盛り上げていきましょう。遠くは山形、新潟、愛
    知などからご参加されています。
    皆さん、忌憚のない意見をお願いします。



 3、研究発表 

   基調提案 「道徳科の質の高い指導法と評価に関する研究発表」
          
   提案者  三ツ木純子先生(川崎市立鷺沼小学校長)
         松澤ゆかり先生(川崎市立宮崎小学校長)

 現場は、道徳科になった時、これまでの指導で良いのか、からスタートしている。でも、道徳科の目標に戻ってみていくと、大きくは変わっていない、
だからこそ、何が変わったのか、何が変わらないのかをきちんと見据えないといけない。
 児童の学習評価や成長の道徳性に関わる様子とは、学習活動を通じて多面的多角的に見とれるようになったかどうかを見るもの。そのためには、授業学び評価の一連の流れが大切。質の高い、多様な学びを積み重ねていきたい。
ポイントになるキーワードは「自我関与」「問題解決学習」「道徳的課題の体験的活動」である。
子どもの思考が切れてしまうという課題(振り返りの時には、教材と自分を繋げて考えるのが難しいという
課題)については、子どもがきちんと学習すれば、評価は付いてくるのでは、という仮説を立証する。
 課題を明確にして児童の充実を図る、という一文があり、質の高い学習が重要。子ども主体。教師の発問に対して考えを表明、子どもの言葉で課題解決をしていく。発問は、子どもの考えをつなぐような発問である必要がある。次につながっていく発問が重要。子どもの発言を元にまとめ、自己課題を解決していく授業が理想。
 展開教材を通して、登場人物の生き方から考える。自分ごと、自由思考、多面的多角的に捉える。
どうして〇〇なのだろう、と教材にすでに書いてあるものは、活用してもよい。どうして主人公は、〇〇という行動をとったのかな、は体験的に考えても可能。迷う質問をはたくさんすることが大切。みんなが迷うことで、沢山の友だちの考えを知ることができる。子どもの意識がつながる発問をしていく。
振り返りの発問では、その時間に考えた価値について、自分事に落としていく事が大切。(今までの自分はどうでしたか?〇〇をしてよかったことはありますか?、など)
  道徳ノートの活用もとても有効。でも、書くのが苦手な子は、教師が聞いたり、記録をしたりしてもよい。とにかく、振り返りを次の授業にどんどん生かしていく意識を持つ。子どもたちの自己評価や相互評価も大切にしていきたい。自分自身との関わりの中で深め考えたことについては、教師からの励ましも大切。


 事例研究 「道徳科における評価に関する具体的な実践」
          
   提案者  神生留佳先生(川崎市立戸手小学校教諭)


 良くも悪くも素直、元気な5年生である。4年生までのこともあり、自分
中心、自分の今思っていることを満たすことが最優先。自分を見て欲し
いアピールが多い。我慢すればいいでしょが染み付いているのもよくない。
感情コントロールも難しい。そこで、友だちの間違いを指摘。いいところに
目を向けられる子どもたちになって欲しいという願いがある。
 そのためには、なぜこうなるかという事象を考えて、自分が認めて欲しい部分を認める、成功体験が少ないので、安心して生活できるを積み重ねていくと言う経験をさせたい。
今回の指導のポイントは
自己肯定感を高める
自分の成長感じられるように進める
自分も友達も、良いところを認められるようになる
ことだった。

今までとこれからを意識して振り返りを書くようにした。また、ふりかえり見取りと違う時には面接法を使った。すると、知らない子どもの姿を知ることで声かけも変わってくる。認めて、励ます。指導を心がけた。
 10月千羽鶴の教材、アンケート結果。嘘ついたことがないっていうのがウソ。嘘って気持ちが悪いけど、なんかついちゃう。さんウソがうまくいっても、よっしゃ、という気持ちにならない。自分が気持ちいる為に。
 11月ブランコ乗りとピエロでは、呟いたりして、よく友達の話聞く様子が見られた。憎むことをせず人と意見が違う時こと、相手の思いを聞かないといけない、話し合いたいと考えた子どもと面接したら「意見が合
わないままは良くない、自分のことも分かってもらえる、もっといい考えも生まれそうだね。」となった。

6月挨拶の教材では、高学年の挨拶少なくなる事を受けて授業を行った。、自分の恥ずかしいという思いと、大切だと思う思うという葛藤を振り返れているAさんの考え。「アンケート挨拶をする人とされる人の気持ちが分かった、実行していきたい。」
7月のふりかえりについて、面接学習をすると、恥ずかしいけど、近所の人に挨拶してる。という子どもの
声も聞こえてきた。
11月ブランコ乗りとピエロでは、相手はこう思っているだろうと決めつけていることが多かったことに気づく。聞かないと分からないこともあるねという気づきが生まれた。
1月の実践では、単純にすぐに困った人を助けられる。友だち、先生、誰にでも。と思っていた子どもに、
授業後、面接すると、とにかく助けることが大切だと思っていたけど、相手のことを思いながら助けることが大切だと考えていることが分かった。」という気持ちになっていることが聞けた。みんな考え方が違うから認めることが大切なんだな、と思うようになった。と言っていた。
 結果、4月の道徳アンケートでは、「おはなし面白い」「友だちの意見聞くのが楽しい」という子が多かったが、12月になると、「自分が高まっていく楽しみ、を感じられたら良い」「相手の話を聞きたい」「意見を言い合いたい」となった。4月見れば大きな進歩である。たくさん考えることが楽しい、という意識になった子どもたちなので、今後は話し合ったことと生活とつながること、自分を高めていくこと、ができると良いと思っている。
 面接で褒めることは、学校生活の中で道徳以外にも役立つ。学習が楽しいにつながる。クラスが落ち着いてきた。とも聞かれる。

 質疑応答

・道徳性の評価について、や決意発表は道徳ではない? ・指導と評価の一体化はどのようにしたか? 
 等の意見がでました。

 そうありたい、という気持ちがある、として捉える。なかなか人間はそのようにできない。共に考え、議論する道徳。子どもが頑張っているような見取りを褒めて励ましていくことが大切だと思っている。
 今のままの自分でもいい、と思う子もたくさんいる。考えていることをそのままみていきたい。


  小グループでの協議 全体協議

 ・・・そして基調提案を受けて、小グループ
 に分かれての研究協議が行われました。
 参加者は、6~7人位のグループに分かれ、
 基調提案についての意見や、それぞれの
 道徳の実践を出し合いました。、


 講演会
    「道徳科の指導と評価の一体化を目指して
         講師  柴原 弘志 先生 (京都産業大学教授)
 
  とにかく、教師が「評価の視点」を持っているか、が大切。ワークシートに書くコメントは、評価の指針をもって書くべきである。例えば、「傍線は自分の考え」、「波線は他の人の意見を参考にしているところ」「二重線は今後の生き方」など。それを子どもにも説明してからコメントを書くと、子ども自身も、道徳の授業の視点、ねらいがわかる。
 ねらいを教師がどうとらえているのか、具体化・明確化しなくてはいけない。どのような視点なのか。
道徳の主旨は多面的・多角的に考える事だから、例えば、「時間軸」「空間軸」「立場を変える」など、どの面から多面的に考えさせるのかを意識した授業をする。
 成長の様子をみとるのだから、少なくても2点間の比較でないとおかしい。
 ワークシートに書きこむ時に、既に評価を意識して評価簿に残していくことで継続的な記録がとれる。それには、普段から日常の中でどんな成長した姿を見取るのかを意識していることが大切。

 評価の「観点」と「視点」は違う。観点ではなく、「視点」。(要録と通知表の役割が違うように、この2つは違う)その子の「状況」と「学び方」プラスその子の姿の具体を示すことで、その子自身が自分でも参考にできる視点が示せる。勇気づける評価でなくてはならない。
 道徳授業の本質とは。解説を読んだだけでは、授業作りはできない。総則も読む必要がある。
詳しくは、各県や自治体、などのhPでも公開されている。考え方をしっかり学ぶ必要がある。
 道徳に関わる評価は2つ。
   「児童に対する評価」・・・・これは評価の「視点」
   「授業に対する評価」・・・・これは評価の「観点」
  どちらも、道徳の目標に対して、効果的に行われたかどうか
  を見ていく。

 ★大切なポイントは、児童生徒の発言を「傾聴して」受け止める
 ×子どもの考えを「聞く」のではない。

 音声言語だけではない。観察などを使って本来の子どもの姿を
 見て、聴いてとらえる。
 ただ、子どもの発言を聞いて、「そうかそうか」ではない。本音で言っているのか、根拠は何か、
 を傾聴して聴く。問い返し、切り返し、等を使って、深めていく。別の言い方は?具体的には?など
 教師は、子どもの本当の気持ちや言葉を聴き取れるようにすることがとても大切。
  「言葉を音声言語として受け止めない。」
  「聞く」ではなく、「聴く」で受け止めないとダメです。
 それには、やはり、言語分析と観察が大切。

 そのことは、教師だけではなく、子どもたち自身にも意識させないと。
  『人の話は聴く』こととは・・・。相手の存在を認めて、寄り添っていくこと。

 『重層的発問(問い返し)』(しっかり相手の言葉を受け止めよう、聴こうと思ったらできるはず。)
  ・確認、焦点化(それって、どういうこと?)
  ・根拠、理由(なぜ?、どうしてそう思うの?)
  ・言い換え(他の言葉で言うと?)
  ・比較(主人公や他の人の考えとどう違うの?)
 など・・・

 なので、「どうするのか」を聴く時には、必ず「なぜそうするのか」
を聴くと、行動のみ方法論のみを論じることにはならないはず。

 聴き方名人は、話し方名人を作ります。聴き合える集団を作るのは、きちんと「聴ける教師(大人)」です。
目で聴くことを教えているのもそれにつながる指導です。

 そして、相手に伝える時についてもそうです。
 「話す」のではなく、『語る』のです。舌で伝えるのではなく、「吾の言葉で語る」のです。自分はここにある
という語りをしなくては。
 「話し合い」から『語り合い』へ。   →  『共に考え、共に語り合う』 これが道徳科の内容です。

 道徳科の目標は目の前の子どもの姿そのものです。他の教科は、子どもの姿より少し上を目指している。
だから道徳科では、教師も共に聴き合う、語り合う人として、同じ土俵で、道徳の授業を行うのです。
究極は 「自分が自分に問う」ということなのです。こういう状況だったら、自分はどうするだろう、こうだろうか
あーだろうか、そう考える自己内対話が大切です。
  『自分と対話し、言葉をさがす』これが道徳の授業です。

 「しんゆう」と言う字の 「〇友」には何が入るでしょうという問いに、子どもたちは自分の思いや経験で色々
な字を入れます。 親、信、身、神、進、伸、針、侵、芯。 それぞれに大切な友達に対する自分の見方や、
考え方が出ています。そんな思いを出し合い、教師と本音でやり合えるやりとりが道徳には必要なのです。

 そして、授業の最後、振り返ったことも、ぜひ、交流したいものです。
振り返るポイントも示しておきました。このポイントも低学年から高学年に向けて増えていきます。
低学年は3つ位ですが、高校生になると7つに増えます。
先ほども言いましたが、この観点はいつも示しておくことが必要です。子どもにも授業の観点を示しておく。
それが「内容知」+「方法知」の学び方なのです。受容語、評価語も含めて子どもたちに学び方も学ばせたいものです。

 閉会挨拶

 あっという間の4時間でした。今年は特に、参加者が自らの意見を言う場面も多く、普段の活動も交流
できました。柴原先生の講演でも私たち教師の側に立って、具体的に示唆していただき、すぐに明日につなげることができる研究大会でした。ご参会の皆さんにも満足していただけたようです。ありがとうございました。


 
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