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日本道徳教育学会 神奈川支部
第18回 神奈川支部学習会
2018.6.2
於 國學院大學 たまプラーザキャンパス

           「考え、議論する道徳科授業を目指して 」

 小笠原 優子 先生<國學院大學教育開発推進機構特任教授>
 根岸   久明 先生
<横浜市教育委員会北部学校教育事務所 授業改善支援センター 洗足学園音楽大学講師>


 
小笠原先生
 「道徳の授業は...?
   学生の小・中学校道徳授業における学習経験から見えてくること 」

日本女子大学と國學院大學に通う学生に、小・中学校時代に受けた「道徳授業」に対するアンケート結果から見えてきたことを提案してくださいました。道徳に対するアンケートを見ると、「道徳は嫌い」「きれいごとですよね」などの回答もあったそうです。道徳に対するイメージは以下の結果だったそうです。

道徳に対するイメージは...?

國學院大學の学生

6:4
プラスイメージ:マイナスイメージ

日本女子大学の学生

4:6
プラスイメージ:マイナスイメージ

男女比半々

女性のみ

出身地広範囲

神奈川、東京、川崎出身者多い


 どのような道徳の授業を受けてきたか?

①内容について
   内容項目A15人 B10人 C12人 D→9人 など、覚えていることは、ばらばら。
   75人中10人ほどが「道徳の授業を覚えていない」「記憶にない」と答えていた

②授業で使われていた教材は? 
   心のノート→29人 副読本→18人 プリント→12人 テレビ→12
   「心のノートにほこりがついていた」 「自作の資料が心に残った」

③指導方法はどのようなものでしたか?
   「テレビを見ただけ」「国語の授業のようだった」
   「いじめやけんかなどトラブルが起きた時に話し合った」「本を読んで話し合う」

④学生がもつ道徳授業のイメージ
   内容を覚えていない→11人 席替えや係決めをしていた→6人
   いつも楽しみにしていた→2人  

⑤心に残った道徳授業はありますか?
   「教材に魅力のあるもの」「いじめについての授業」「話合いで考えを交流した授業」

  このような学生の声から、小笠原先生は「先生の姿が子どもに影響を与える」ことや
  「子どもの問題意識をもつ必要性」があるとお話くださいました。

根岸先生
 根岸先生からは、これまでの授業の実践や魅力的な教材についてお話がありました。

来年度から中学校でも道徳科として始まります。中学校では以下の声があがっているそうです。 ①負担感②読み物教材の負担感③授業の進め方(理解しないまま今日まできている)④50分間の授業(20分間で終わってしまう)⑤教科書への窮屈さなど

そのような声から「1時間の授業展開の仕方を学ぶこと、何を目指し、
何のためにやっているのかを確認すること」を今、やるべきこととして
提唱しています。

横浜市の道徳授業の進め方も提示して頂きました

決意表明させない、教材を丸ごと与える、
振り返りがなければ道徳ではない、
書くことはせず、話し合う 
などが横浜市の道徳では言われてきた流れがあったそうです。
以下は導入から終末までの流れです。          

  導入(個)    学習課題を提示し、問題を意識化する「自分のことを考えよう」
          (状況を言ってから教材を読む)
  展開前段(集団) 道徳的価値の把握(ねらいとする道徳的価値への考え方・見方) 
  展開後段(個)  道徳的価値の自覚(自己の振り返り)
  終末       道徳的実践意欲の向上

  → 個から集団へ、そして最後も個で振り返る流れ
    ①一人一人考える
    ②多面的・多角的に考えを出し合う。(話し合うことで考えが深まる)
    ③自己を深める

  学習課題を提示してから教材を読み、問題解決的に授業を進める中で価値の把握をしていく。
  という流れが一般的です。

横浜市の学習展開の提示ののち、自作教材である「買えないパン」「母のバンザイ」などの実際の授業展開を教えて頂きました。「主人公だったらどうするか」「何に対してのバンザイなのか」などの発問から子どもたちが自分事として考えることができる工夫も教えて頂きました。


また、「ブラッドレーの請求書」では、主人公の気持ちが変化したのは何がきっかけだったのか(お母さんからの請求書で気持ちの変化があった)「一冊のノート」では、おばあちゃんを責めていた主人公が変わるきっかけになったのは何だったのか(一冊のノートを見たときに何に気づいたのか)など、教材から問題意識をもち授業を進める具体例も提示されました。

教科の授業と道徳の授業の共通点は何か?に対してある生徒の答えは、「先生の教え方で授業が決まる」だったそうです。この言葉には我々思わずうなってしまいました。


その後の協議では、海野先生から「考えさせる道徳と心に訴える道徳」とは?という質問に対して、根岸先生からは「教材が心に訴えるものが多かった」「どのクラスでもできるものではない」「班で議論するもの」など大事にしていることをおっしゃっていました。また、田沼先生からは、研究者の立場で考えると「心が動く」「感動する」というメカニズムは、認知的側面が動くことであるというお話がありました。「教材」を使うために授業する、どのような資質・能力を身に付けさせるか、など「道徳授業で何を目指し、教材で授業するか」を意識したいものだというお話も頂きました。 


次回学習会は9月1日(土)1500~ です


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