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第19回の学習会では、実際に授業を作り上げる中から評価について考えた、実践報告と提案が行われました。

 まずは三ツ木先生から、道徳科の評価についての基本的な事項が確認されました。
 「道徳科でも道徳教育でも道徳性を育てるが、道徳性は評価しない」
 「道徳科の評価については、学習状況や道徳性に係わる成長の記録を継続的に把握し指導にいかす。」
 「数値による評価は行わない。」
 「教師が、子どもを励ます評価である。」

 そこで、今回は、「児童の自己評価を一つの資料とした評価の仕方」について考えて見た実践が発表されました。

 <ワークシートの活用>
 ・授業中の児童の変容が見えるような構成を考える
 ・授業中の振り返りでは、何を記述するのかを明確にする
 ・学習の振り返りは複数用意する(〇をつける、絵や図で書く等)

 <資質・能力の三つの柱と道徳科で育成する道徳的資質・能力との関連性>
 知識・技能・・・道徳的諸価値についての理解を基に、生き方についての考えを深める
 思考力・判断力・表現力等・・・物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深める
 学びに向かう人間性等・・・自己を見つめ、自己の生き方についての考えを深める

         ↓(それに伴って、ワークシートの自己評価は次のように考えた)

 <ワークシートの自己評価項目>
 ・学習内容を自分の経験をもとに、自分ならどうするか、考える
 ・友達の意見を聞いたり話し合ったりする(議論する)中で、何を学んだか
 ・これから大切にしていきたいものや自分がどうありたいか、考える

 ワークシートは1つのツールである。自己の考えや思い、心の中が見られるものを期待するが、上手に記述できない児童もいる。そこで、児童の表現を手がかりに、次のような具体的な評価方法で、児童が自己の成長を実感できるように工夫した。


 <具体的な評価方法>
   ・観察法  ・面接法  ・ノートや作文による方法
   ・ポートフォリオ評価  ・エピソード評価
  (どれも、自分で気付く評価、自己評価につながるように意図した)



 <<< 授業実践より >>>

 低学年 1年生 「どうしてこうなるのかな」規則の尊重  「たびにでて」礼儀
 
  事前にこの授業で見取る項目を立てておき、座席表に書き込むことと、ワークシートを使って評価。
  (ワークシートと観察法)
         ↓
  座席表を書き込みを授業中の発言や言葉がけに活用し、それぞれの思いや考えを引き出した。
  ワークシートを使って、授業後に聞き取りを行い、児童の思いをくみ取り自己評価につなげたり、
  見取りをしたりした。

 中学年 4年生 「本当の思いやり」親切・思いやり 「絵はがきと切手」友情・信頼

  ワークシートを活用して、客観的評価として子どもの様子を見取った。(ワークシート)
         ↓
  自己成長を感じられるものとして扱うとすると・・・。 項目をハッキリさせた方が良い。
   ・自分事としてとらえ、自分を見つめているか
   ・道徳的価値について、多面的・多角的に考えられているか
   ・道徳的価値についての理解をもとに、今後どうすればいいのか、などの自分の生き方についての学び
    につながったか
  という点から、児童の評価を多く見取ることができた。この評価をもとに子どもたちに対して価値付けを
  したことをフィードバックすることで、自己肯定感を高めたり、自信をつけさせたりすることが大切だろう。


 高学年 5年生
 「夢を実現するには」希望と勇気、努力と強い信念 
 「あいさつって」 礼儀 
 「ケンタの役割」よりよい学校生活、集団生活の充実

  道徳の学習を継続的に考え、授業でのワークシートをもとに個々に聞き取りをし、(面接法)その後の子どもの様子を観察した。教師がワークシートから読み取った児童の考えを面談により広げたり、考えをより明確にすることによって子どもの考えや思いを意識化させる効果があった。
          ↓
  評価本来の「児童を励まし伸ばす評価」につながったのではないか。

 
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・質疑応答・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
  〇面接法については、どんな子を対象にしたのか。 → 全員できないが、気になった子から始めた。年間通して全員と話せると良い。

  〇座席表の工夫について。ついていない子はどう見取るのか → 今回は、クラスを借りて行ったので、全員はつかないが、継続的に積み重ねていって見取りたい。また、つぶやき等も聞き取っていきたい。

  〇今回やった課題は。 → それでも、かなり担任にとっては負担がある。より簡単に見取るにはどうすれば良いかが課題である。また、一面的な評価にしないように考える事も必要だ。

  〇学期末の評価で、意図しなかった様子も出てきたか. → 教材によって、日常に近いものは心に残っていて、普段の自分の生活と少し離れているものについては、意識が薄かった。また、学んだことが継続している事が見とれ、意外な成長場面も見られた。

  〇教師が見取らなければならないのか。周りの友達同士の相互評価でも見とれないのか。 → 1年生でもお互いに認める場面は出てきていた。「あの子できてたよ」とか「あの子の考えは素敵だね」とかを教えてくれた。もちろん、子ども同士の評価もできる。
                  ↓
   「主体的・対話的な学び」なので、友達の意見で変わることも多い。なので、今後はその変容も
   見取るべき。対話によって気持ちが変わった、というところも評価していきたい。



 

次回学習会は、12月1日(土)1500~ です


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日本道徳教育学会 神奈川支部
第19回 神奈川支部学習会
2018.9.1
於 國學院大學 たまプラーザキャンパス

           「児童が自らの良さに気付く道徳科の評価

 三ツ木 純子 先生<川崎市立鷺沼小学校長>
 松澤 ゆかり 先生
<川崎市立宮崎小学校長>
 
神生 留佳  先生<川崎市立戸手小学校教諭>