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日本道徳教育学会 神奈川支部
第20回 神奈川支部学習会
2018.12.1
於 國學院大學 たまプラーザキャンパス

 道徳学会神奈川支部、記念すべき20回学習会が12月1日行われました。
今回の学習会では、前半に相模原市上鶴間中学校の馬場校長先生から「特別の教科道徳」の教科化に向けて、学校で取り組まれてきた実践の紹介。後半には、相模原市立小山中学校の西澤先生より、神奈川県版資料「きらめき」で進めてきた道徳科における多様な指導法、についてお話がありました。

 「道徳科における多様な指導の工夫」
                 相模原市立 上鶴間中学校 校長 馬場尚子 先生


 テーマを「生徒一人一人が主体的に学ぶ姿勢の育成~道徳及び教科の授業における考察活動を通じて」
と設定し、今まで研究してきた。昨年度までは、全ての教科を開こうとしたが、今年度は特に道徳の授業に
特化した。理由は、道徳の授業を通して「自分事として課題をとらえ、自分はどう判断し・どう考えるかをもっ
て授業に参加できるようになる」ことによって、生徒の授業全体への主体的な姿勢が育成されるのではない
か、という仮説に基づいて研究を進めようと思ったからである。次のようなことを校内で意識して行うことで、
研究を進めた。
 1、「なぜ、教科化をするのか、なぜ特別の教科道徳なのか」への理解
     →何が必要で、何が求められているのか、を考えた。
 2、道徳の授業の「量的確保」と「質的変換」 
     →答えが一つではない課題に対して、子どもたちが道徳的に向き
       合うことで「考え議論する道徳」へ授業を転換する。
       (主体的・対話的で深い学びにもつながる)
 3、道徳教育の目標と道徳科の目標の確認
     →学習指導要領の読み直し、理解
 4、道徳科の評価について
     →「自己を見つめ、自分事として考えているか」「物事を多面的・多角的に考えようとしているか」
       と行った学習状況を把握して評価を実施していくこと。
 そして、管理職を含めて、学校全員で道徳の授業をする体制をとった。
 具体的には、
 〇道徳の資料としては、読み物資料が最も効果的ととらえた上で県版資料「きらめき」を中心としながらも、
   多様な読み物、多様な資料を活用して授業を行った。その中で、あえて、「道徳の授業のこうあらねば
   ならない」というタブーを排除する実践に挑戦した。
 〇協力的な指導の工夫として、「全校職員が道徳の授業をする」、「TT等を活用した授業の工夫」「それぞ
   れの得意分野を活かした指導」「道徳授業のローテーション化」などを行った。チーム学校全員道徳を
   行ったことで、質的・量的な転換につながった。
 また、評価の研修については、
 1、評価のねらいとその意義についての確認、を校内研修で確認、学年会で検討する。
 2、スキルアップに向けて・・・。
    1道徳ノートをもとに全職員が次年度に向けての評価を作成するという実践研修
    2作成した評価の共有化と課題の整理
    3添削・整理した評価の提示と整理
 を行う事で、学校全体の道徳課へのスキルアップを図った。


神奈川県版道徳資料「きらめき」で進めてきた道徳教育
                 相模原市立中学校教育研究会 道徳教育部会
                 相模原市立小山中学校 教諭 西澤悦子 先生

 
 中学校は平成31年に「特別の教科 道徳」が全面実施される。考える道徳、議論する道徳、評価の工夫、
などを視点に改めて「道徳」について考え、取り組んでいくことは、道徳授業の改善や充実に直接つながる
と思う。ただ、考え方や方向性は、今までとは大きく変わらないと感じている。ただ 「特別の教科」になる
ことで、「道徳の授業の量的確保」「道徳教育の質的変換」が図れることは良いことだと思う。
 相中研道徳主任会(相模原中学校研究会道徳主任会?)の取り組みを充実させ、相模原全体の道徳の
基盤作りを行っていきたいと考え、今まで30年近く使って研究されてきた県版資料「きらめき」を活用して、
道徳教育の充実をはかった。
 1、神奈川県版資料「きらめき」・・・資料に描かれた人間を通して自らの生き方を考える資料集。
                 ・できるだけ生徒の身近な素材をもとにした親しみのある資料
                 ・その場面になれば生徒たちも同じように感じ、同じように振る舞うであろう一面
                  (同一性)を含む資料  →日常の自分が振り返れる資料

 2、相模原の道徳教育
   1、相中研主任会・・・「きらめき」を使った「道徳の時間」の実践力を身につける。
     ・「きらめき」の授業作り資料
     ・「授業の進め方」の学習会
     ・出席者を生徒に見立てた模擬授業
     ・公開授業と研究協議
     ・読み物資料の作成

   2、道徳性アンケート・・・市内公立全37校で1年生を対象に実施。
                   入学間もない生徒の道徳性をはかり、
                   以降の指導の手がかりを得る資料としても
                   有効ではないか。
   3、今後
     ・新しい教科書の読み込み
     ・分析
     ・具体的実践を積み重ねる
     ・検証

  <<研究討議>>

〇授業の中で見取る「道徳性の深まり」とはどんなものか。どこまで到達したら良いのか。
  → 1時間の道徳の授業でどういう「資質能力」を高めるのかを明確にしないとどのように道徳性を高める
    のかは明確にならない。子どもたちの内容項目への理解や考え方は様々、一律にものさしは決めら
    れない。それぞれの内容項目に対する考え方が深まった、と見とれるような評価をしていきたい。

〇「きらめき」ではない教材でもこの教材でどの道徳的な学びを深めるのかを毎時間考えていってほしい。
  きらめきは、各校で地域教材として残して、今後も使っていく。教科書になることで、指導書ありきになら
  ずに、研究会を通しても、目の前の生徒に合わせて授業することを伝えていきたい。

〇全体計画はどのように立てるのか。活用されているのか。
  → 全体計画があっても、はってあるだけでは意味がない。活用されて
     こその計画。各学年にしつこく現状を確認することで、手直しや修
     正を加え、実際に活用されるものになる。

〇日常の中から資料を探すには。
  → 近道はない。自分で話しを聞いて読み込んで色んなアンテナを立てる
     のが大切。でも、まずは目の前にある資料、教材を読み込むことが
     大切。自己開発資料は危険を伴う。安易に使わない方が良い。やはり何人ものプロが長い時間を
     かけて検討した教科書は、授業に耐えうるものになっていると思う。自作資料等は、一人で作らず
     多くの人の意見を聞いて、慎重に作っていきたい。

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  参加をしている皆さんも、日々道徳の実践を重ねている方が多く、討議がいつも濃いものになってい
  ることを感じます。  次回も楽しみです。

次回学習会は、2月23日(土)1500~ です


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           「 道徳科における多様な指導の工夫

 馬場 尚子 先生<相模原市立上鶴間中学校長>
 
西澤 悦子 先生<相模原市立小山中学校教諭>