活動報告に戻る

日本道徳教育学会 神奈川支部
第21回 神奈川支部学習会
2019.2.23
於 國學院大學 たまプラーザキャンパス

           「 生徒の心に寄り添う指導と評価の実践

 杉戸 美和   先生<横須賀市教育委員会事務局総務部教育政策課>
 
村田 真友子  先生<横須賀市不入斗中学校教諭>
 藤平 克美   先生<横須賀市不入斗中学校教諭>
 第21の回学習会は、横須賀市の先生方をお呼びして、実践やこれからの
道徳についてのお話をして頂きました。中学校では、この4月から特別の教科
・道徳が本格実施されます。それに先行して研究をしてきた「道徳ノート」の実
践やそれを作るにあたっての考え方等について、3人の先生方から詳しいお話
を聞くことができました。 

 「道徳教育に 今 求められていること」  杉戸 美和 先生

 道徳教育に求められていることは、全て「目標」に込められている。まずは、道徳の指導要領をしっかりと
読み込むことで、道徳教育に求められている考え方や授業作りはわかってくるはずである。

 ① 道徳教育で、今、先生に求められていること

 教科化になったこの時に、教員が真剣に道徳に取り組む事で、今の教育現場の全ての課題に対応できるはずだと思う。(学力の2極化、不登校、いじめなど)、いごごちの悪い学級集団を教師は作っていないか、を再認識する。
 「児童生徒一人一人の心の成長を願い、寄り添う教師の姿勢」こそが、今求められている。この一見当たり前のことが、再確認される時代であるということ。
 道徳の教科化で、「人が人を育てる大切さ」を再認識できるはずである。
 
 ② 生徒の心に寄り添う指導

 「生徒の心に寄り添う」って、どういうこと?
  ・児童生徒の言葉を引き出し、心を込めて話を聴こうとする。
  ・児童生徒の立場に立って、悩みや苦しみ、その子の心情や言葉の意味を理解しようとする。
  ・柔軟な姿勢で児童生徒に向き合う。(決めつけない、押し付けない)
  子どもと向き合う際も、「強さ気高さ」「弱さ醜さ」を併せ持つ一人の人間として向き合う姿勢を意識する。

  ☆それには、教師も「心の余裕をもつ」ことが大切。
  教師自身の感性の鏡を磨いていく。「感動」や「美しい」と感じた心を子どもに伝えていくことも大切。
  教職員が、心身共に健康であることが、子どもの教育にとって何よりも大切。 

 「学習して成長する」とは・・・。

  目指す方向と、その子自身の成長の度合いをしっかりと把握する。
  学習したから必ず成長するわけではない。その子その子の現在の状況をきちんと把握し、それぞれの
  伸びを実感できるように見取っていくことが大切。
    そのためには・・・。
      ・子ども一人一人の実態を把握する(子ども理解)
      ・内容項目を解釈し、明確なねらいをたてる(ねらい理解)
      ・教材を多角的、多面的にとらえる(教材理解)

    が大切。

 「評価:について・・・

  〇「評価」の2つの側面
  ・教師・・・指導の目標や計画、指導方法の改善、充実に取り組むための資料となるもの
  ・生徒・・・自らの成長を実感し、意欲の向上につなげていくもの
    →「指導に生かされ、生徒の成長につながる評価でなくてはならない」指導と評価の一体化

  〇『計画的な評価』の推進
   ・学年ごとに評価のために集める資料や評価方法を明確にしておく。
   ・評価結果について教師間で検討し、評価の視点などについて共通理解を図ること。
   ・評価に関する実践事例を蓄積し、共有すること。

    計画的に評価を行うことで、「妥当性」「信頼性」がある評価ができる


  「道徳ノート」からみえてくる生徒の心 ~横須賀市立不入斗中学校の実践~
 
                        藤平 克美先生  村田真友子先生


  埼玉県川口市の榛松中学校を参考に、「語りたい思いがあふれてきて書ける」ようなノートを
 目指して作った。
  学年はじめに「道徳で考える心」として、22項目について説明し、ねらいを明確にして一年間道徳の授業を進めることを伝える。毎時間必ず振り返りを行い、本時で考えた心について自分の中で再確認させた。
また、授業では発言が難しい子どももいるので、書かせてから発表させる、学期末には振り返りをして、次期の目標を立てるなどを校内で話し合って行った。
 また、道徳の授業時間以外にも、朝会や集会で感じたこと、日頃考えたこと、気になったニュースや映画、
生活で気がついた事などをかきとめる中から、様々な内容項目について考えるきっかけにしていった。
 実践では、小学校1年生の教材「橋の上のおおかみ」をとりあげ、中学生ならではの視点で授業を進めた。
小学校とは違った視点 「くまやおおかみの行為は、本当に優しいのかな」について考えた。
「自己満足ではないか」「考え方が変わったのだから良い」「優しさに理由なんていらない」など多面的多角的な視点から意見が出た。最後に「本当に優しい人」について振り返った時にも、今までの自分から広がった考えがもてたようだ。
 また「裏庭のできごと」の授業をした時には研究協議で、内容項目について、どうしても教師が自分の思った方向の意見をとり上げがちになってしまうことに改めて気づき、目指す姿と反対の考えが出ても、人間の弱さとして取り上げることで、考え方に深みが出ることを学んだ。
 道徳の授業についても、PDCAサイクルを意識できる。
 P・・・生徒の実態に基づいて指導計画を立てる。
 D・・・実際の授業の展開(深い学びの実現)
 C・・・生徒が授業の中で何を考えたのかを知る。授業の展開を振り返る。
 A・・・授業改善をする。
そのように、「道徳ノート」をもとに道徳の授業を積み重ねてきたことで、
クラスも変わり、子どもも変わってきたことを実感している。



 
   <研究協議>

 〇PDCAサイクルは、「授業評価」であって、子どもの自己評価についてはないですよね。
      →はい。これはあくまでも教師の側の評価サイクルです。

 〇意図が明確で「道徳ノート」素晴らしいです。このノートの教師のコメントはどうしていますか。
   教師の価値観の押し付けにならないかといつも自分は心配しています。
     →一言コメントを書くこともあるが、あまり書かない。なるべくクラス全体に紹介して交流したり
      広げていくことをしていきたい。朝見て、その日のうちに返したいので、とりあげたいものを
      見つけて紹介していくことを毎日意識しているので、コメントは書かないことも多い。

 〇評価について。ワークシートに教師の望む答えやきれい事を書いてしまう子についてはどうしたら?
    →それは、教師の普段の関わりがカギになる。
      子どもは、教師に認められたいと思って書いている。なので、普段から教師が、色々な考えが良い
      という姿勢を見せ、人間は強さと弱さがあって、その中で生きている。正解はない、と言い続ける
      ことで、こちらが望んでいることを見せていくことが大事。

 〇発問を変えることで、小学校の教材も中学校で取り上げられることが
  わかった。視点を変えて取り組んでみたい。

 〇道徳ノートが工夫されて、今後の活用も期待したい。
    →子どもにも教師にも、このノートがポートフォリオになっている。
      主体的で深い学びにつなげていきたい。

 〇カリキュラムマネージメントとして、教師側はあるが、子ども側にもあるはず。
  例えば、1時間ごとの道徳をどうつなぐか。小単元にしてまとめ、それを年間で構成してPDCAにして、
  子どもに意識させることもできる。
  それには、学期毎、1年間でどう学ぶのかを子ども自身にも考えさせる。各学期で振り返ることで、次の
  学期に自分を改善させ、次の自分につなげることで、子ども主導の道徳になるのではないか。

 〇中学校は4月から、教科書道徳時代に入る。教科書を使って、もう一歩工夫した授業ができるように
  研鑽を積んでいきたいものです。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  参いつもながら、道徳教育に対してのみなさんの熱い思いが感じられた学習会でした。
  次回も楽しみです。

次回は、「道徳フォーラム2019」が4月27日に
開催されます。ぜひお越しください。
   
   (詳しくは、掲示板を見てください。)

活動報告に戻る