平成26年度 日本道徳教育学会 神奈川支部
2014.12.23
於 横浜市教育委員会東部学校教育事務所
第Ⅰ部
○田沼支部長挨拶
本年度も、2本の実践提案を受けて講演をしていただきます。1番ホットな話題を聞くことができる。
神奈川支部から発信していきたい。
提案①「魅力ある教材の開発と活用について」望月はる美先生(相模原市立鳥屋中学校総括教諭)
神奈川県道徳教育部会の活動
○神奈川県版道徳資料作成委員会「きらめき」の作成について
・地域の特色を生かしている。日常的・現実的・親しみがある。
・『きらめき』には歴史がある。
・121編の資料がある。3学年
・県下の先生で作っている。教育事務所の人も作っている。
・8割は先生たちが作っている。=子供の実態を見た中で作っている。実態に近い資料。
・資料の中に描かれている主人公の言動や思いから考えることができる。
・経験年数が浅い先生でも教えやすい資料。手引書に展開が書かれている。
先生の発問と生徒の反応が書かれている。
・全ての学校で資料を活用している。異動しても安心して使える。
・神奈川県の先生から公募➡しかし、すぐには、活用できないので委員が実践してみる。
・資料収集の観点がしっかりと決まっている。
☆聞き合って・伝え合って、自分の中に貯めていく。
○相模原市道徳主任会の取り組み
<「ねらいにせまるような模擬授業」の学習会を開く>
・読み物資料を実際に作っていくと、どんな発問をしたらよいかということがわかる。
・大まかにどんな内容にするのかみんなで考える。➡文章にする。
・1つのねらいに生徒たちが進んでいかれるような資料を作る。
・各学校に戻って事業実践をする。➡37校の1名が公開授業。みんなで
実践をもとに話し合う。
・発問をするポインが資料を作成することによって、若手の先生も学ぶことができた。
→ ☆資料が、平成23年度最優秀賞を受賞
・若手の先生がどんどん意見を言う。
・中堅の先生が授業をしても若手の先生が意見をしっかりという。底上げができている。
・今後…教材開発を進めていきたい。
☆これから…話合い活動が中心の授業になる。それは、資料の善し悪しにかかわってくる。
・間接経験資料だけではなく、自分の体験をもとにした資料を。
・神奈川らしさの資料作り=今年の夏に郷土の各それぞれの地区の資料をあげた。
・神奈川県の郷土色をもつ。自然がたくさんあることを生かした教材。
例えば・・・相模原の特色 宇宙に行った大豆。
→これから、教科書ができるが、諸先輩方がつくってくれた「きらめき」も活用
しながら道徳の授業をしていきたい。
提案②「自分の考えを伝える小グループからの話し合い活動」
奈良沙織先生(川崎市立渡田小学校)
三ツ木純子(川崎市立鷺沼小学校)
・低学年は、意見が出しやすい。それは、ただ自分の意見を言うだけで
深まり合うことが少ない。その反面、学年が進むと発言することをためらう。
深まりにくい。だから、子ども同士の話をつなげるためには、教師のかかわり方が大きい
話し合いを深めるための工夫
*子どもが自分の考えを持つこと=課題がしっかり分かる。
*意思表示をする。=誰の意見に反対?誰に賛成?どんなことから同じ?
*少人数での話合いの充実。=2人➡4人➡6人
4人ぐらいになると司会・記録などの役割をつくる。
*座席の配置=子ども同士の顔が見える。先生のそばに集まる。➡話し合える環境
☆教師は、子どもとともに学ぶ姿勢が大切
4年生の授業実践例の紹介「文渓堂 えがおであいさつ」
<資料を通して、子ども達が自分自身と重ねて考えてほしいと教師は考えた>
1)ゲストティーチャーの活用
➡いろいろな立場で働いている教職員が学校には、いる。その方々に道徳の時間に
ゲストティーチャーとして授業に来ていただく。
=今回は、毎朝門であいさつをしている校長先生を招いた。
2)あいさつ調べカードを作成
➡あいさつなんて、今更なんできくの?できてるよ!という子ども達は、思って
いたが、カードに記入し、自己評価をすることによって、自分は「あれ?あい
さつしていないな。」と、思うことができた。
=子どもにだけ聞くのではなく、学校の中で子ども達にかかわっている教職員は
「あいさつについて」どんな風にかんがえているのか?ということを知る。
話し合いに参加してほしいと希望し、アンケートをとった。
☆大人でも子供でもあいさつをすると気持ちがいいということに気づかせたい。
あいさつ調べカードをつけることによって、だれにあいさつをしているのか?と
いうことに改めて気づけた。また、自分から顔は知っているけれど、よく知らな
い人にあいさつをしていない、自分にきづくことができた。
【授業の中で】
・資料の中の登場人物の役割演技であいさつの仕方の違いを知る。
・役割演技をしていくなかで、おかあさんとおばさんは、あいさつだけではなく違う
話をして情報交換をしていたことに気づく。
・先生たちのアンケートを見せる。➡子ども達の意見の中に先生たちの考えが加わった。
・1つの班だけ、校長先生が加わって話合いをした。➡担任以外の先生と話すのは新鮮。
・校長先生がどんな思いであいさつをしていたのかが、分かった。
=相手の気持ちを考えて。声の大きさを考えて。
【最後に授業を通して】
・今後の課題…今回の授業の実践は、「あいさつ」をするということは、子どもに分かりやすかった。
・動作化や役割演技がすることを通して
・教師のアンケートは有効
・ゲストティーチャーの活用
・授業後、明るく挨拶ができるようになった。
☆子ども達の立場を相互比較することによって、もっと話したいという思いがもてた。
それには、仕掛けや手立てが必要。
<質疑>
提案①について
○今後、学習指導要領改訂で資料集がどうなるのか?副教材として存続していくのだろうか。
載っている資料はかなり古い時代のものもある。どう扱っていくのか。また、大きな声で」
あいさつすることが大切という内容。大きな声を出すことが挨拶なのか?ということに
ついての見直しは、どのようにしていけばよいのだろうか?
●改定のたびに、年代による背景や状況が変わることを問題視している。しかし、場面設定
がどのようであっても、子ども達に分かるようなことで納得いく力がある資料は、お話を
残している。補足説明をすることもある。
○間接資料だけではなく、魅力的な資料を作っていきたいとは、具体的にどのような?
●多様な資料の形が求められる。今のきらめきは、同学年、同級生の主人公が多い。そこに
こだわらず、伝記の資料も取り入れたいが、取材が難しい。伝統工芸などを取り入れたい。
○きらめきは、読み物資料を通しての定着をしめしてあるのか?
●特にそのようなことの提示はしていない。授業の流し方。発問などの展開の仕方。終末は
先生たちが工夫する。
○さまざまな考えをもつことを道徳の時間のねらいにもつと難しいのではないか。絞り込む
ことが大切なのでは。もどかしい行動のとり方がでてくるものなのか?
●作品自体の意図をあちらこちらにいかないようにしていきたい。でも、1つの考え方に絞ら
れすぎるのはよくない。間違えてしまうことはだれでもあるが、そのあとどうするのかとい
うことを考えることがこの資料では大切だと思った。
提案②について
○私も、この資料を扱い、ゲストティーチャーではなく、保護者に入ってもらった。大人の
考えも聞くことができた。子ども達が挨拶ができていないと感じていた。学校と家庭で
あいさつを進めていくきっかけになった。先生にアンケートだけではなくこのような活用
もある。
●保護者にはいってもらうということは、直接話す機会があるので、そういう方法があるの
だと思った。校長先生だけではなく、栄養士さんなど様々な方に関ってもらうことが大切。
○気持ちのいい挨拶と、心のこもった挨拶をわけているのはなぜ?
●資料では、気持ちのいい挨拶とは、どんなことを考えているのかということを1つ目として
設定した。気持ちのいい挨拶・心のこもった挨拶と書きにくい。心のこもった挨拶=態度
を考えてほしい。と思った。
こんなこと考えたこともなかった。」と、感想をもらった。
< 研究総括・・・赤坂先生 >
実践提案①について
☆素晴らしかったところ☆
・個人として、組織として活動している。
・公募は、地域のリーダーを育てるのに有効である。
・魅力的な資料を開発している。
・誰でも実践できるところ。
☆今後に向けて☆
・毎週毎週読み物資料では飽きてしまうことも考えられる。
モラルスキルトレーニングや映像などの多様な授業を使い、切実感がある・他人事ではない
ように考えさせていきたい。また、1単位時間で扱う資料だけではなく、複数時間で学べる
ものも考えにいれると有効である。
・課題が明確なので、さらに前進することができるだろう。
実践提案②について
☆素晴らしかったところ☆
・意図的に、発展的に子どもをつなげるために2~4人組の話し合いにしているところ。
・どの子も自分の意見をもてるようになる手立てとしての役割演技や動作化。
・校長は、子どもにとって特別な存在であり、人格者である。
ゲストティーチャーとして話を聞くことはとても有効である。
・書く活動は、自己内対話であり、友達の考えを読む活動は、相互の対話である。
☆今後に向けて☆
・子どもの実態に応じた柔軟な道徳授業は、子どもに学ぶ姿勢も大切である。
・高学年や中学生になると話し合いが難しい。話すことをためらう。そこで、書くことで
自己内対応。書いたものを学級通信などで紹介し、友達の考えを読むことによって相互の
対話ができる。 「書く➡学級通信➡読む➡相互の対話」
・子どもの学ぶ姿勢が大切なので、今後も子どもの実態を考えた多様な柔軟な道徳授業を開
発していきたい。キーワードは「子どもに学ぶ姿勢を大切にする。」こと。
第二部 記念講演 『これからの道徳教育を考える』
柴原弘志先生(京都市教育委員会指導部長・元文部科学省教科調査官)
道徳教育に関する検討の経緯をはじめ、教科化における基本的スタンスや、「特別の教科道徳」の目標に対する確かな理解と取り組みの充実について、多様で効果的な道徳教育の指導方法への改善についてなど、多方面にわたり熱のある数多くの言葉をいただきました。
・教科化と言っても、構造的には変わらない。「要」としての役割。
大切なのは、時間内の充実であり、どんなねらいで授業をしているのかである。
・「指導と評価の一体化」を目指し、どのように評価するのか、どのように指導していくのか、を
考えることが大切であろう。
・では、どういう資質・能力が求められているのか。
道徳的価値から内面を見つめる→ メタ認知
自分は、どう考えている…ということがこれからは大切になってくる。自分の内面を見つめる。
自分ってどうなんだろう?と考えたことが、その子なりの言葉になるのか。
・立場を明確化すること → 自分とは違う考えの人がいるので、交流することが大切
→ そこで言語活動の充実も求められる。
自分とは違う価値観にふれることが大切である
<「教員免許」について>
・免許の問題は、初等教育は学級担任、中学校・高等教育は、専任ということも考えられる。
また、ローテーション道徳で得意な資料で勝負することも一つのやり方である。他の教師が
関わってもいいのではないか。
・道徳教育が大学教授の授業が充実した授業をすれば、学生が育つ。若手の教員が充実した
授業ができる。
<教科書図書について>
・検定教科書になるからと言って、その教科書だけで授業しなければならないということで
はない。内容値と方法値が伴う。自分なりに学べるのが教科書であると考える。
<「評価」について>
・道徳性が育ったかどうかである。100%はわからないので、その子に見られたこと、
のびたことを保護者や子ども自身と共有すること。
・学びは、どうだったか?指導は、どうだったか?道徳性が育ったのか?という個人内評価であり、
関心や意欲でも見とれる。その子のちょっとした変化を評価していく。観察と文字分析で内面を
みとる。「よかったな。ここがのびたな。」という評価。プロとして、教育科学的に評価する。
より信頼性がある評価。
・指導としては、子どもたちに、今日は何をとらえさせたいか、が重点になる。
→そのためにどんな資料を使うか、どのように発問するか、を考えていく。
その時間のねらいの達成に効果があるのか。
<資料について>
・どういう資料を使って、どう価値をつかませるのか。
・私たちの道徳=地域の人向け・保護者向けにも作られている。
・補充・進化・統合、を意識した多様で効果的な指導方法を考える。
・道徳の6割の資料は 起承転結バージョンが多い。
・自分の選んだことを道徳的価値で話す。
・道徳性=人間が判断をするときの多く。一人一人の内面において統合されているもの。
・知的になるものを言葉にした。自分とのかかわりとして道徳的価値。
認知的側面は、評価できる。
・読み物資料の良さは、簡易性・経済性 普及性。そして、保存性=いつでもどこでも何度でも。
そこから、思考性や創造性が生まれる。文字から想像できる。しかし、読解力の差が学びの差に
なってはいけない。
・さらに、今後とも、映像や音声など、多様な教材を開発してく必要がある。
・聴き合う=声なき声、聞こえてこないことを聞こうとすることが大切。
・語り合う=場や機会をとらえて、言語活動を充実させる。
言葉化させる機会を作る。できるだけ多くの場で言葉にすることを作る。
多様な教材の活用を考える
<その時間のねらいの達成に効果があるのか>
・道徳教育とは何か→道徳性を養うことを目標とする教育である。
その子なりの道徳性を作っていくために、学ぶ機会をしっかりと作っているか。
・道徳的実践力が高まれば、行為に表れる。
実践は、特別活動の時間に。だからこそ、内面を道徳の時間に学ぶ。
☆メタ認知 → 言語化することが大切!! そして、それを交流する。
道徳教育に対する意欲が高まり、今後より一層一人一人が道徳教育に対して真摯に向き合っていかなければならないと感じた大会でした。